プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「もう、本当に今日はダメ! 今日はお出かけしたいの!」
「お出かけ? なんか予定あんの?」
「そうじゃないけど、今日は買い物に行きたいから」
「ふーん、俺も一緒に行っていい?」

 普通に会話しながらも、二人は攻防をやめない。莉都花の服を脱がしにかかる柊仁の手を、左右の手で交互にガードする。

「うん、いいけど。そんな面白い買い物でもないよ?」
「何買うの?」
「いろいろかな。着替えとか、身だしなみ用品とかいろいろ」

 そこでぱたっと柊仁の攻撃が止む。莉都花の顔を真上から覗き込み、真っ直ぐに見つめてくる。

「着替え……? りっかちゃん、もしかしてそれって――」
「毎回持ち帰りするの面倒なんだもん……お泊りセット、ここに置いてもいい?」

 莉都花は少しだけ困ったように笑いながら、言い訳を添えて、買い物の真意を伝えた。

 想いを伝え合ってからというもの、二人は頻繁に互いの家を行き来している。しかも、そのまま相手の家に泊まることが大半だ。

 莉都花はお泊りグッズを毎度準備して持っていくのだが、これが本当に面倒くさい。できれば、手ぶらで行って帰りたい。

 許可してくれるかと、様子を窺うように柊仁の顔を見てみれば、そこには嬉しさを滲ませた表情が広がっていた。

「あー、まったく! りっかちゃんってば、本当に最高!」

 ぎゅーっと強く抱きしめられる。

「ちょっ、柊仁?」
「いくらでも置いていい。好きなだけ置いていいよ」

 にこにこと笑いながら言う柊仁に、莉都花もほっと安堵の笑みを浮かべる。

「そう。それならよかった。ありがとう、柊仁」
「うん。今日中に全部揃えようか。俺、朝飯準備してくるから、りっかちゃんはゆっくり準備してきて」
「え、ありがとう?」

 柊仁は莉都花の額に軽くキスすると、さっさと身を起こして、洗面所のほうへと消えてしまった。
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