プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「なんだかすごく喜んでくれた? ……そっか、喜んでくれるんだ。ふふっ」

 彼のテリトリーに深く踏み込むことを許してもらえた喜びがじわじわと広がっていく。

 断られるとはまったく思っていなかったが、実際に受け入れてもらえるととても嬉しい。何よりも柊仁が喜んでくれたことが一番嬉しかった。

 莉都花としては、なかなかに大きな決断だったのだ。

 相手に近づけば近づくほど、別れたときの苦しみは大きくなるから、これまでの恋ではとても慎重に距離を縮めてきた。ゆっくりゆっくりと愛を育む交際をしてきた。

 でも、柊仁とは始まりからして普通ではなくて、想いを自覚したときには莉都花の恋への意識はとても前向きになっていて、信じられないくらいのスピードで二人の仲を深めてきた。莉都花にとってはイレギュラーな恋なのだ。

 柊仁ともっと近づきたいという気持ちは今も変わらずに持っているものの、経験のないことに踏みきるのにはどうしても勇気がいる。

 今のような半同棲状態になったことは過去に一度もなくて、ここからは未知の領域だと思うと、自分の気持ちとは裏腹に足がすくんでしまった。

 初めて体を重ねたあの日以来、柊仁は莉都花との関係に随分と積極的になっていて、言葉で態度で表情で莉都花を愛してくれている。

 半同棲状態になっているのも、少し慎重になりはじめた莉都花と、より一層仲を深めたい柊仁、双方の気持ちがぶつかった結果だ。

 柊仁が本当は同棲したがっているのだと薄々感じてはいたものの、はっきりとは言われていないし、莉都花もなかなか決断できないしで、互いの家を行き来する関係ができあがっていた。

 でも、毎日のように全身全霊で愛されていれば、柊仁に近づきたい気持ちは強くなる。柊仁の想いに応えたいという思いも増す。

 だから、同棲に向けての最初の一歩として、私物を置くことを提案してみたというわけだ。きっとこれから二人の仲は益々深まっていくことだろう。
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