プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 床に横に並んで座っても、今の莉都花は甘えられない。このあとの話が怖くて俯いてしまう。

 そんな莉都花を柊仁は優しい眼差しで見つめながら話し始める。

「りっかちゃんは、わかってしまうよな。不安にさせてごめんな」
「柊仁……」
「たぶんりっかちゃんの予想は当たってる。千紗は大学の頃の恋人なんだ」

 本当に予想は当たっていた。二人の反応がもうそれとしか思えなかったというのもあるが、莉都花のこれまでの恋の経歴も、その予想を後押しする要因になった。

 また、自分の恋人に、自分以外の運命の相手が現れたのではないかと、そう思ってしまったのだ。

「そっか……そうかなって思ってた」
「やっぱりわかるよな……でも、もう随分と前に別れてる。就職する前にはもう別れてた。千紗の浮気が原因で」

 俯けていた顔を勢いよく上げ、驚きの表情をしながら、柊仁と目を合わせた。

 聞き間違いではないかと思ったが、柊仁の複雑な表情を見れば、本当にそれを言ったのだとわかる。

「えっ、嘘……信じられない。千紗ちゃんはそんな子じゃないよ」
「でも、見たんだ。会社の先輩って言ってた男と抱き合ってたんだ」
「そんな……」

 どうしても自分の知る千紗と、柊仁の語る千紗が結びつかない。とても温厚で、優しくて、誠実な千紗がそんなことをするわけがないと思ってしまう。

 俄には信じがたいその話を柊仁は続けていく。
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