プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「俺は大学院に進学してたから、一足先に社会人になった千紗からすると、頼りなかったのかもな。その先輩に相談してるっていう話は聞いてたけど、まさかそういう仲になってるとは思わなかった。どうしても許せなくて、『最低だな』って罵って別れたんだよ。千紗は何か言おうとしてたけど、裏切ったやつの言葉なんか聞きたくなくて、さっさと離れた」

 作り話のようにしか聞こえないその話に、莉都花の感情が追いつかない。

 柊仁の悲しみに同調する気持ち、彼を慰めたい気持ち、千紗はそんなことをしないと信じたい気持ち、そして、これからの恋の関係はどうなるのかという不安な気持ち。

 様々な感情が湧いて、整理できない。

 なんて言葉をかけたらいいのかわからなくて、どういう反応をしたらいいのかもわからなくて、ただただ眉を寄せて、困った顔で柊仁を見つめる。

 柊仁は切なさを滲ませた笑みを浮かべながら、その後のことも語り出す。

「そんな別れ方だったから、わだかまりが残ったんだろうな。恋愛に対して俺は後ろ向きになった。もう誰かと付き合う気にはなれなくて、俺は女と距離を保つようになった。表面上は女好きを装ってたけど、そうやって装うことで上手くあしらってた」

 思わず大きく目を見開く。確かに出会ったときの柊仁は、随分と軟派な人に見えた。だが、そこにそんな重い理由があったなんて、少しも気づかなかった。

「信じられないか? でも、お持ち帰りしたことなんて一度もないよ。もちろん誰かと付き合うことも、デートすらもしてない。りっかちゃんに出会うまではね」

 再び驚くものの、なぜかとても納得できた。莉都花と恋人になってから、柊仁がほかの誰かにうつつを抜かしたことはなく、莉都花を真っ直ぐに想ってくれていた。そんな人が派手に遊んでいたとは思えない。

 彼の言っていることはすべて真実だと思った。

「そう……信じるよ。信じる」

 柊仁を見つめる視線でも、そう訴えかければ、柊仁の瞳がふっとやわらいだ。
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