プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 それから数日後の夜。千紗に話がしたいと言って、時間をもらった莉都花は、千紗を連れてカフェバーを訪れた。柊仁は先にそこで待っている。

 もちろん千紗に話があるのは柊仁であって莉都花ではない。しかし、千紗はそれを知らない。正直に言えば、遠慮してしまうかもしれないと思い、あえて言わなかった。

 騙すようで心苦しいが、千紗のためにもなると思っているから、強引な方法でも構わずに進めた。ここ最近の千紗の表情は少し暗くて、莉都花はそれもずっと気になっていたのだ。千紗にも柊仁とのわだかまりをなくしてほしいと思っている。

 奥の席に柊仁の姿を見つけ、莉都花は真っ直ぐにその席へと向かう。莉都花の後ろを歩いている千紗はまだ気づいていない。

 千紗が柊仁の存在に気づいたのは、彼の目の前まで来たときだった。

「えっ……莉都花ちゃん?」
「ごめんね、千紗ちゃん。二人のことはもう聞いたの。それでね、ちゃんと話をしたほうがいいって思って、勝手にセッティングしちゃった。ごめんね」
「莉都花ちゃん……」
「私は帰るから、二人でちゃんと話して。気になってること全部話してきて」

 千紗を柊仁の向かいの席に促し、柊仁とは小さく頷き合ってから、店を離れた。そうして向かったのは柊仁の家。

 彼の家で一人彼を待つ時間は、途方もなく長い時間だった。
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