プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「ただいま、りっかちゃん」
柊仁が帰ってきたのは、莉都花がここへ来てから一時間くらい経過した頃だった。
迷うことなく莉都花の隣に腰を下ろす柊仁に怖々問いかける。
「……どうだった?」
「ちゃんとわだかまりをなくしてきたよ」
そう言う柊仁の顔はとても晴れ晴れとしている。
「あの日のことは、俺の勘違いだった」
「えっ?」
「抱き合ってたんじゃなくて、抱きつかれて拒絶してたところだったって」
「えっ、嘘……じゃあ――」
千紗は裏切っていないということになる。二人のすれ違いに、切なく胸が痛む。
「裏切られてはいなかった。でも、その先輩への憧れみたいな気持ちはあったらしくて、そのせいでそういう事態を招いたのなら、俺とは別れるしかないって思ったらしい。自分の甘さが招いたことだからって。だから、冷たく振った俺を追いかけることはしなかったって言われた」
「そう、なんだ……」
「きっと俺がもっと大人だったら、こうはなってなかったんだろうな。まともに話も聞かずに振ってしまったこと、謝ってきた。千紗はそれを受け入れてくれたし、自分が悪いとも言ってたけど、千紗に対する申し訳なさはたぶん消えないと思う」
柊仁の気持ちが痛いほどわかる。莉都花も和真とまともに話さずに彼の前から消えてしまった。わだかまりは消えても、彼への申し訳なさは今も胸の中にある。
莉都花は柊仁を労わるように、彼の背をそっと擦った。心なしか柊仁の表情がやわらぐ。
「それでも千紗とやり直すつもりはないよ。もちろん向こうもそんなこと思ってない。俺が今好きなのはやっぱり莉都花だから。約束通りこれからもそばにいる。だから、安心して。ちゃんと莉都花が好きだから」
また、言葉でも表情でも想いを伝えてくれている。真っ直ぐに強く伝わってくる。
それならば、莉都花もそれを真っ直ぐに受け止めたい。
「柊仁……私も好きだよ。大好き。帰ってきてくれてありがとう」
この日は強く抱きしめ合って眠った。二人の想いは間違いなく本物で、そこに偽りなんてなかった。強く強くお互いを愛していた。
でも、人の心は一色で染められるわけじゃない。もっと複雑なマーブル模様を描くのだと、ほんの少し先の未来で思い知ることとなった。
柊仁が帰ってきたのは、莉都花がここへ来てから一時間くらい経過した頃だった。
迷うことなく莉都花の隣に腰を下ろす柊仁に怖々問いかける。
「……どうだった?」
「ちゃんとわだかまりをなくしてきたよ」
そう言う柊仁の顔はとても晴れ晴れとしている。
「あの日のことは、俺の勘違いだった」
「えっ?」
「抱き合ってたんじゃなくて、抱きつかれて拒絶してたところだったって」
「えっ、嘘……じゃあ――」
千紗は裏切っていないということになる。二人のすれ違いに、切なく胸が痛む。
「裏切られてはいなかった。でも、その先輩への憧れみたいな気持ちはあったらしくて、そのせいでそういう事態を招いたのなら、俺とは別れるしかないって思ったらしい。自分の甘さが招いたことだからって。だから、冷たく振った俺を追いかけることはしなかったって言われた」
「そう、なんだ……」
「きっと俺がもっと大人だったら、こうはなってなかったんだろうな。まともに話も聞かずに振ってしまったこと、謝ってきた。千紗はそれを受け入れてくれたし、自分が悪いとも言ってたけど、千紗に対する申し訳なさはたぶん消えないと思う」
柊仁の気持ちが痛いほどわかる。莉都花も和真とまともに話さずに彼の前から消えてしまった。わだかまりは消えても、彼への申し訳なさは今も胸の中にある。
莉都花は柊仁を労わるように、彼の背をそっと擦った。心なしか柊仁の表情がやわらぐ。
「それでも千紗とやり直すつもりはないよ。もちろん向こうもそんなこと思ってない。俺が今好きなのはやっぱり莉都花だから。約束通りこれからもそばにいる。だから、安心して。ちゃんと莉都花が好きだから」
また、言葉でも表情でも想いを伝えてくれている。真っ直ぐに強く伝わってくる。
それならば、莉都花もそれを真っ直ぐに受け止めたい。
「柊仁……私も好きだよ。大好き。帰ってきてくれてありがとう」
この日は強く抱きしめ合って眠った。二人の想いは間違いなく本物で、そこに偽りなんてなかった。強く強くお互いを愛していた。
でも、人の心は一色で染められるわけじゃない。もっと複雑なマーブル模様を描くのだと、ほんの少し先の未来で思い知ることとなった。