プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 1Rの部屋にアラーム音が鳴り響く。それを仕掛けた人物の代わりに、莉都花がそれを止めた。

「柊仁、起きて。アラーム鳴ったよ。おはよう、柊仁」
「んー、りっかちゃん、おはよ。はあー、仕事行きたくないな」

 莉都花にぎゅっと抱きつき、駄々をこねている。

 共に朝を迎えるうちにわかってきたことだが、この男は朝に弱い。いつもなかなかベッドから起き上がろうとしないのだ。

「もう何言ってるの。ほら、起きるよ」
「うーん」
「夜のデートが楽しみなら、その前に仕事を頑張ってきてください」

 今日は哲也のバーで過ごしてから、莉都花の家へ行くことになっている。その夜の楽しみのためにも、昼間はしっかり働けと活を入れれば、ようやく寝ぼけ眼をこすりながら起き上がった。

「しかたないなー。りっかちゃん、パワーちょうだい」

 両手を大きく広げて、莉都花を待っている。

 莉都花はくすりと笑って、大人しくその腕につかまった。

「あー、マジで力がみなぎる。どんな栄養剤よりも効くかも」
「はいはい。よかったね」
「うん。本当にやる気出た。ありがとう、りっかちゃん」

 トントンと軽く背中を叩いてから離れた。

 こんなどうしようもない姿を見ても、なぜか柊仁への愛しさは増す。かつてないほど深い愛に溺れてしまっているようだ。莉都花にはそれがとても心地いい。

 今日も大きな幸せを噛みしめながら、莉都花は仕事へと向かった。
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