プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 いつものカウンター席に座り、哲也が作ってくれたカクテルを一口飲んだ莉都花は、切なさからくるため息を小さくこぼす。

「りっかちゃん、もしかして具合悪い? もう帰ろうか」

 隣に座る柊仁が心配の眼差しを向けている。せっかくのデートだというのに、莉都花の表情が冴えないから、余計な心配をかけてしまったらしい。

「ううん、大丈夫。ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「わかった。きつかったらすぐ言えよ」

 こくっと小さく頷いてから席を立った。

 沈んだ気持ちを切り替えようと、冷たい水に手を浸す。手の平を流れる血が冷え、それが体を冷やしていく。酒で火照った顔も少しはマシになり、莉都花は少しだけ冷静さを取り戻した。

 胸の痛みは消えていないけれど、それはもうしかたがない。この恋はどうしたって誰かが傷つくのだ。甘んじてその痛みを受け入れるしかない。

 柊仁と結ばれた莉都花にできることは、精一杯彼との時間を大事にして、愛し合っていくことだけだ。

「よしっ、大丈夫」

 鏡の中の自分に向かって一度にっこりと微笑み、その表情に違和感がないことを確認してから、莉都花はトイレを出た。

 すると、タイミングよく柊仁と哲也の会話が聞こえてくる。
< 132 / 154 >

この作品をシェア

pagetop