プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「柊仁が少しでも私のこと好きでいてくれるなら、柊仁と離れたくなんてない。ずっとそばにいてほしい。千紗ちゃんのところには行ってほしくない。私だけを好きでいてほしい。ずっとずっと私を好きでいてほしい」
「莉都花……」

 どんなに醜くても、格好悪くても構わない。自分の想いを伝えずに、身を引くことはしない。過去の過ちと同じになってしまうから。

 今は莉都花も柊仁も苦しいかもしれないが、余計なしこりを残さないためにはこれが必要なのだ。

 そして、想いをすべてぶちまけたなら、あと言うべきことは一つ。

 どれだけ恋が上手くなっても、成長できていたとしても、莉都花の根底は変わっていない。愛する人への気持ちがそうさせる。

「でも、でもね、やっぱり私は私なの。柊仁に幸せになってほしい気持ちが消えない。だからね、千紗ちゃんのところに行っていいよ」
「行っていいって、何言ってるんだよ……俺は莉都花といるよ」

 柊仁の優しさに胸が痛む。

「でもっ、ほかに好きな人ができたなら、賭けは私の勝ちでしょ? だから、私のお願い事聞いて?」

 小さく息を吸い、とても切ないその願いを口にする。

「私と別れてください。柊仁が好きだから、どうしようもなく好きだから、柊仁には本当に好きな人と結ばれてほしい。心から愛する人と幸せになってよ。お願いします」

 深く頭を下げ、強く願う。柊仁の幸せを誰よりも強く強く願った。


 痛いほどの沈黙が数十秒流れる。

 頭を下げたまま床を見つめ続ける莉都花に、とうとう柊仁が声を放った。

「っ……わかった……俺は必ず、心から愛する人と一緒になるから」

 柊仁はそれだけ言って、莉都花の家を出ていった。ほんのわずかに抱いていた希望も完全に消え失せた。
< 135 / 154 >

この作品をシェア

pagetop