プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 自分以外の気配がなくなった家がとてつもなく寂しい。寂しくて、切なくて、苦しくてたまらない。

 天井を見上げて、涙を堪えてみるが、それはどんどん生成され続けて、莉都花の目を覆いつくす。

 ひどくぼやけた天井を見ながら、莉都花は小さく呟いた。

「あーあ、勝っちゃった……どうしていつもこうなるんだろう……勝ちたくなんて、なかったなぁ……」

 切ない言葉と共に涙もこぼれ落ちる。近くのティッシュペーパーで覆って処理してみても、薄い紙ではまったく追いつかなかった。

 本当になんてひどい星のもとに生まれたのだろうか。自分の好きな人の縁結びばかりして、自分は誰とも結ばれない。もはや憐れを通り越して、滑稽とすら思えてくる。

 莉都花は大粒の涙をこぼしながら、乾いた笑いをこぼした。

 心は痛くて痛くてたまらないが、後悔はしていない。彼の背中を押したことも、彼を愛したことも、彼と出会ったことも、何一つ後悔していない。

 恋に後ろ向きだった莉都花を救ってくれたのは間違いなく柊仁で、本音をぶつける強さを与えてくれたのも柊仁だ。

 だから、この恋心を後悔する日はきっと永遠にこない。

 そして、この想いが消えることもきっと永遠にないだろう。

 今までの別れとは違って、決して後ろ向きな気持ちにはなっていない。でも、柊仁以上に好きになれる人には出会えそうにないから、きっとこれが最後の恋だと思う。

 最後にとてつもなく幸せな恋をさせてくれた柊仁に、莉都花は心の中で『ありがとう』と呟いていた。
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