プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
　ガチャリと鍵を回し、家のドアを開ける。中へと一歩足を踏み入れた莉都花は、そこで違和感に気づいた。

「えっ……なんで？」

　玄関に明らかに自分のものではない靴が置かれている。莉都花が家を出たときにはなかったものだ。でも、その靴には見覚えがある。

　あんなことになる前だったなら、この靴に違和感なんて覚えなかっただろう。ただただ嬉しくなっただけだ。

　でも、今これがここにあるのはどう考えてもおかしくて、莉都花は混乱する。まさかと思いながら、玄関の先に目を向けたら、笑顔の彼が目の前に現れた。

「おかえり、りっかちゃん」

　タイムスリップでもしたのだろうか。その光景は少し前まで、何度も目にしたものだ。

　合鍵を渡していたから、彼が待っていることは幾度となくあって、莉都花はいつも満面の笑みで「ただいま」と言っていた。

　でも、さすがに自分がSFの世界に紛れ込んだとは思えなくて、莉都花の口からこぼれたのは至極もっともな疑問だった。

「柊仁……なんで、いるの？」
「大事な話があるから」

　柊仁はそれだけ言うと、まるでこの家の主のように莉都花を中へと促した。
< 138 / 154 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop