プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 あの日のように柊仁と向かい合って座る。

 いったい何の話なのだろうか。合鍵を返しに来たとか、柊仁の家にある莉都花の私物についてとか、そういう二人の別れをより現実的にする話だろうか。

 確かにそれは必要だと思うが、顔を合わせて話すのはまだつらい。

 莉都花は早く終わらせてくれと、ただ黙って柊仁の言葉を待った。

 なにやらごそごそと鞄から何かを取り出そうとしている柊仁を見て、合鍵が出てくるのかなと予想する。

 しかし、柊仁が取り出したものは、どうやったって莉都花には予想できないものだった。

「莉都花、好きだ。俺と結婚してください」
「っ!?」

 柊仁が鞄から取り出し、莉都花の前に差し出したものは、きらりと光る指輪だった。

「えっ……? なんで……? ええ?」
「これ書いてもらってきた」

 驚く莉都花は置いてけぼりのまま、柊仁はさらに衝撃的なものを莉都花の前に差し出した。

 実物を見るのは初めてのその紙――婚姻届には、柊仁の個人情報が書き込まれている。

 そして、証人欄には見覚えのある名前が二つ書き記されていた。
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