プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「えっ!? これ……お父さんとお母さんの名前……どうして?」
「先週の土日とこの土日を使って、説得してきた。どうしても莉都花と一緒になりたいから、結婚を認めてくださいって」
「ええ!? ……そんなこと、知らない。聞いてない……」

 柊仁からはもちろんのこと、両親からもそんな話は聞いていない。そもそも結婚の話自体出ていなかった。それが、お別れからたった十日でプロポーズとは、どういう展開なのだと混乱する。

 莉都花の両親に会ったということは福岡まで行ったということだ。しかも、先週と今週のどちらもだなんて、簡単にできることではない。

 莉都花を差し置いて、とんでもない暴走をしている柊仁にめまいを起こしそうになる。

「莉都花に先に伝えたら、責任感でそうしてると思われそうだったから、あえて言わなかった。それに俺一人でやらないと、俺の本気が伝わらないだろ?」
「本気って……」
「本気だよ。でないとここまで用意しない。莉都花の不安を拭うにはこのくらい必要だと思って、ご両親のサインももらってきた。言葉だけじゃ足りないと思ったからな。偶然が重なり過ぎてるから、たぶん言葉だけでは莉都花の心には届かないだろうなって」
「私の、心……」

 そっと自身の胸に手を当てる。ドクドクと強く脈打っているが、何が理由でそうなっているのか自分でもよくわからない。超展開過ぎて、何もかもが莉都花を刺激しているのだ。

 でも、柊仁の言う通り、確かに今莉都花の心は動いている。切なく、甘く、疼いている。

 この十日間、ほとんど何も反応しなかった心が今は強く騒いでいる。
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