プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 よく知らない男と、苦い思い出のある場所で、酒を酌み交わす。

 あまりの非日常空間に、莉都花は夢でも見ているような気分で過ごす。

 柊仁は自分で誘ったわりには、莉都花に迫ることはせず、先ほどのバーテンダーを交えて、くだらない話をしている。

 柊仁はバーテンダーのことを『哲さん』と呼んでいるが、本名は哲也(てつや)らしい。『哲さん』は愛称だと教えてもらった。

 この哲也と柊仁はそれなりに長い付き合いのようで、互いに遠慮がない。年の近い兄弟にすら見えるが、二人の年齢は意外にも離れている。

 柊仁は二十九歳と莉都花と同年代だが、哲也のほうはまさかの四十歳だという。三十代前半と言われても違和感がないくらい若々しい。

 そんな二人のやりとりはなんだかコントのようで、莉都花は観客にでもなった気分でそれを眺めている。
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