プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 その後は、柊仁の比較的どうでもいい話を聞きながら過ごす。本当は大輝とのことについて訊きたい気持ちがあったが、他に人のいる場所ではそれも難しい。莉都花はほとんど聞き役に徹していた。

 そうしてもうしばらくの時が経ち、莉都花が一杯目のカクテルを飲みきると、柊仁はすかさずおかわりを確認してくる。

「りっかちゃん、次何飲む?」

 あまり長居するつもりはないが、もう一杯くらいはいいかと、哲也に次を注文する。

「度数低めで、さっぱりしたもの、お願いできますか?」
「では、また柑橘系のものにしましょうか」

 莉都花は「お願いします」と頷いて答える。

 柊仁もグラスが空になっているから、彼も何か頼むのだろうと思っていれば、柊仁はなぜか突然立ち上がった。

「哲さん。俺に全部つけといて」
「はいよ」
「これ、りっかちゃんにあげるよ」
「えっ?」

 柊仁はビンゴの景品と思しきものを莉都花に押しつけてくる。

 あまりに突然のことで、莉都花は考える間もなくそれを受け取ってしまった。

「じゃあね、りっかちゃん」
「え、ちょっ、待って!」

 柊仁は振り返ることなく、バーを出ていってしまった。

「えー……これ女の子にあげるやつだったんじゃないの? もう、どうしたらいいのよ……」

 一人残された莉都花は、新たに置かれたグラスと手の中にある景品を見て、今日何度目になるかわからないため息をこぼした。
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