プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 三人がやって来たのは、パンがおいしいことで有名な洋食店。パンとデザートがついていくる日替わりランチセットは、ランチタイムの人気メニューで、大半の客がそれを注文する。当然、莉都花たちも迷うことなく日替わりランチセットを注文した。

 店員が下がり、三人の空間ができあがると、莉都花が会話の口火を切る。

「千紗ちゃん、旅行どうだった? 楽しかった?」

 今日はGW明けの出勤日で、千紗からGW中に家族で旅行に行くと聞かされていた莉都花は、その話を聞くのをとても楽しみにしていた。

 なにしろ千紗の旅行先は、花とイルミネーションが美しいテーマパークで、莉都花が一度は訪れてみたいと思っている場所なのだ。

 千紗はにこにこと笑って、莉都花の問いに答えてくれる。

「うん、楽しかったよ。バラがすごくきれいでね、たくさん写真撮っちゃった。ほら、見て」

 千紗はおっとりとした口調でそう答えると、莉都花と朱里にスマホの画面を見せてくれた。

 そこに写った美しいバラを莉都花も朱里も食い入るように見る。バラそのものが美しいのはもちろんだが、バラ園の設計も美しい。白に赤にピンクにと、色とりどりのバラがきれいに配置されている。きっと間近で見れば、もっと美しいのだろう。

 やはりここには一度は行くべきだなと莉都花は心の中で一人頷いていた。


 一通りバラの写真を見せてもらい、莉都花たちが「ありがとう」と言ってスマホから目を離すと、千紗は一度スマホを操作してから、再びその画面を見せてきた。

「夜はおしゃれなバーに行って、こんなカクテル作ってもらったんだよ」

 色が何層かに別れたおしゃれなカクテルが写し出されている。カクテル自体にはきれいだなという感想を抱くが、莉都花はそれよりも別のことに気を取られた。

 『バー』という単語であの日のことを思い出してしまったのだ。初対面から距離感のおかしい柊仁という男に出会った日のことを。
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