プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 そんな莉都花とは対照的に、莉都花のいるテーブルの一つ奥にあるテーブルには、ひと際目立っている集団がいる。いや、目立っているのは中心にいる男一人だけか。

 六人掛けのテーブルには、男の他に五人の女性が男を取り囲むようにして座っていて、彼女らは皆、男の気を引こうと必死になっている。

 男はそんな女性たちのアピールをうるさがることもなく、むしろ甘い笑顔を振りまいていて、その様はさながらホストのようだ。

 彼らのテーブル外にも、その男へ視線を向ける女性は多く、男はこの会場の主役でもないのに、その視線をほしいままにしている。

 もしかしたら有名人なのだろうか、なんて考えが莉都花の頭に浮かぶも、そういう騒ぎ方はされていないから、きっとこの男がただ女にモテるというだけなのだろう。

 男は比較的整った顔立ちをしているものの、おそらく女性を惹きつけている要因はそれではない。下がり気味の目尻が優しい印象を抱かせるから、この男がただ普通に座っていても、優しそうな人だな、くらいの感想しか抱かないはずだ。

 この男がこれほどまでに周囲を魅了しているのは、きっと彼の放つ色香ゆえだろう。

 見た目だけではそうは感じないのに、彼の一つ一つの仕草が妙に色っぽさを漂わせている。

 口角の上げ方とか、目線の流し方とか、あるいは指先の動かし方なんかが、形容しがたい色気を放っているのだ。

 莉都花は、そんな男と周囲の女性たちの様子を、まるで別空間にいるような気持ちで眺めている。
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