プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「今は彼女とデート中だから邪魔すんなよ」
「はあ? お前が? 彼女?」

 男は随分と驚いた顔をして柊仁をまじまじと見ている。

 かと思えば、突然腹を抱えて笑い出した。

「はははっ。ないない。独り占めしたいからって、適当なこと言うなよ」

 男はそう言って、まだ笑っている。柊仁が一人の女性と付き合うなんてあり得ないと言っているのだろう。

 莉都花自身も柊仁のことをそんなふうに思っていたところはあるから、この男の反応はわからなくもない。しかし、第三者にはっきりとそれを言われると、なぜだか少し切なくなった。

 複雑な表情を浮かべる莉都花と、涙を浮かべるほど爆笑している男。なんともカオスな空間ができあがっている。

 そんな中で、柊仁は依然として莉都花を守るように腕で男を制したまま、冷たく男を突き放す。

「本当だからあっち行ってろ」
「いやいや、お前が彼女なんて作るわけないだろ。とっかえひっかえしてるくせに」

 柊仁のそういう話はあまり聞きたくないなと莉都花は顔をしかめる。

 はっきりとわかるくらい表情に不快感を表しているはずだが、男は構わずに莉都花に話しかけてくる。

「ねえ、名前は? 俺とも仲よくしてよ」
「おい、やめろ」

 柊仁がさらに強く男を押し返した。

「……なんだよ。んな、怒んなよ」

 柊仁はその場に立ち上がり、莉都花を男から隠すようにして、二人の間に入っている。

「哲さん、悪い。今日はもう出る」

 哲也にそう告げ、ささっと会計を済ませた柊仁は、まだ何か言っている男は無視し、莉都花の腕を引いて店の外へと出た。
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