プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「言っておくけど、りっかちゃんと付き合ってからは、ほかの女の子には会ってないから」
「……うん」

 小さく頷く。今のところ柊仁にほかの女の影は見当たらない。彼の言っていることはおそらく本当だろう。

 しかし、『莉都花と付き合ってからは』という言葉が引っかかって、莉都花の表情は少し憂いを含んだものになった。

 それが柊仁に心配をかけたのだろうか。柊仁はとんでもない提案をしてくる。

「心配ならGPSで追跡してもいいよ」
「えっ!? いや、そんなことしないよ」

 手を振りながら、はっきりと否定する。別に柊仁を疑ったりはしていないし、そもそも仮の恋人のような関係の柊仁にそこまでを求めるわけがない。

 いや、本物の恋人であったとしてもそれはしないだろう。はなから相手を疑うようなことはしたくない。

 それに、莉都花ならそんなことをしなくとも、相手の表情を見るだけで大体のことはわかる。そんなものに頼る意味もないだろう。

 莉都花が絶対にしないと強く否定すれば、柊仁は少し表情を柔らかくして笑っている。

「そう? 本当にいいの?」
「いいって。本当にしない」
「ふーん。俺のこと信用してくれてんの?」
「……別に」

 信用しているとも、していないとも答えづらくて、冷たい返しになってしまった。柊仁はそれを否定と捉えたらしい。

「してないのかよ。じゃあ、やっぱり追跡する?」
「しないってば」

 もう一度強く否定すれば、柊仁はくすくすと声を出して笑った。

「そっか。じゃあ、不安になったらすぐに言えよ? ちゃんと誤解を解くから」

 柊仁がそこまで莉都花のことを気にかけてくれているのがなんだか不思議だが、莉都花は小さく「わかった」とだけ返して、ほかは何も言わなかった。
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