プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 自分のそんな内情を上手く表現できず、表面的なことしか言わなかったせいで、また柊仁に誤解をさせたらしい。

「ん? りっかちゃんはあの店好きじゃない?」

 莉都花はまたそうではないと否定する。

「いや、お店は好きだよ。好きだけど……あそこ以外行かないから」
「へー、りっかちゃんは俺ともっと別のとこに行きたいんだ」
「それは……」

 どうなんだろうと考える。今のままの関係が心地いいような気もするが、柊仁ともっと違う過ごし方をしてみたいと思う自分もいる気がする。

 ただ、傷つくのはもう嫌で、あまり深入りしたくないという気持ちもあるから、簡単には答えが出ない。

 そのまま深く考え込んでいると、柊仁が含みのある笑みを浮かべて、莉都花に問いかけてきた。

「じゃあ、いいところ行く? りっかちゃんがいいって言うなら」

 突然、柊仁から漂いだした妖しい雰囲気に、莉都花は軽い緊張を覚え、小さく息を飲み込んだ。いったいどういう意味で言っているのかと探る視線を柊仁へ送る。

 賭けをしたときの約束を思い出せば、なんだかそこに深い意味が含まれているような気がしてしまうが、この男の言葉はどこまでが本気なのかわからない。

 柊仁の真意を探ろうと、眉根を寄せながら、その表情を読み取ろうとしていたら、柊仁が突然我慢ならないといった様子で笑い始めた。
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