プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 そんな約束から十日後。莉都花はTシャツにチノパンにスニーカーという出で立ちで、初めて訪れる大地を踏みしめていた。デートにしては、少しいい加減な格好にも思えるが、柊仁に歩きやすい格好で来いと言われたからしかたない。

 莉都花の隣に立っている柊仁もとてもラフな格好をしているし、莉都花の格好もこれで問題はないだろう。

 今、二人がいる場所は電車で二時間くらいの距離にある柊仁の地元だ。そこに莉都花好みの場所があるということで、莉都花は柊仁に言われるがままここへやって来た。

 詳細は教えてもらっていないから、今はまだどういう場所に行こうとしているのかはわからない。服装の指定からして、山や川といった自然豊かな場所にでも行くのではないかと予想しているが、今いる駅からはそれらしきものは見えない。

 きょろきょろと辺りを見回す莉都花に、柊仁が声をかける。

「りっかちゃん、行くよ。ここからは少し歩くけど、平気?」
「うん。ちゃんとスニーカーで来たから」

 莉都花は履いているスニーカーを柊仁に見せるように、足を伸ばしてから、かかとでトンと地面を叩いた。

「さすが、優等生りっかちゃん」
「もうまたからかう」
「からかってないって。ちゃんと俺の言ったこと聞いてきてくれて、ありがとうな。二十分くらいかかるから、きつかったら教えて」
「わかった。まあ、体力はあるほうだから、たぶん大丈夫だと思う」

 莉都花のその返しに、柊仁は「頼もしい」と言って笑っていた。
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