プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 入口すぐ近くの階段を上り、生い茂った木々に囲まれた道を歩いていく。その空間だけでも、気持ちがいいなと莉都花は思う。

 木漏れ日を楽しみながら、そのまま数十メートル歩き、最初の曲道まで到達したところで、一気に視界が開けた。

 端から端まで見える限りの地面を鮮やかな黄色が覆いつくしている。

「えっ、すごい! ひまわり畑だ!」

 文字通り数えられないほどのひまわりの群生が目前に広がっている。

 その圧巻の光景に、自然と気分が高揚して、莉都花はその顔に満面の笑みを浮かべた。

「ははっ、いい反応。ここら辺じゃ、わりと有名なところなんだよ。この時期になると、これ目当てで来る人もいるからな」
「これは来るよ。本当にすごいもん」

 うんうんと頷いて、柊仁の言葉に同意する。これだけの見事なひまわり畑は、そう多くは存在しないだろう。

 莉都花はほうっと息を吐きながら、その光景に見惚れる。

「ここからの景色もいいけど、もっと近くで見てみよう」

 柊仁に促され、ひまわり畑の真横の道へと移動する。

 背の高いひまわりは、近くで見るとなかなかに迫力がある。その姿につられて、莉都花の背もピンと伸びるようだ。

 ひまわりから溢れ出るエネルギーが、莉都花の内を温かくしてくれる。

「りっかちゃん、楽しそうだな」
「うん、楽しい。仕事で扱うのは観葉植物だからさ、普段は緑ばかり見てるけど、こういう鮮やかな色の花もいいよね。ひまわりは特に生命力を感じられるし、こっちも元気になる」
「そうだな」

 それから二人はしばらくの間、ゆっくりとひまわり畑を歩いて回り、その光景を存分に堪能した。
< 64 / 154 >

この作品をシェア

pagetop