プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 花畑の中間地点と思しき場所までやって来ると、そこには休憩スペースが用意されていた。駅からずっと歩き通しだった二人は、いったんそこで足を休める。

 強い日差しで火照った体を冷たい飲み物で冷やせば、無意識に「はあーっ」と声が漏れた。柊仁も莉都花の隣で喉を潤し、ほっと息をついている。

 人心地ついた莉都花はなんとはなしにその口を開いた。

「こんなところに連れてきてくれるなんて、ちょっと意外だった」
「ん? どんなところに行くと思ってたんだよ」
「えっ、それは……」

 どう答えようかと莉都花は悩み、少しだけオブラートに包んだ言葉で返した。

「もっとこう女性受けしそうなところなのかなって」
「花だって女性受けはいいんじゃないの?」

 それは柊仁の言う通りだ。花が好きな女性は確かに多いだろう。しかし、莉都花がいっていることはそうではない。

「それはそうかもしれないけど……そうじゃなくて、高級レストランとかブランドショップとか、キラキラした女の人が好きそうなところなのかなって、ちょっと思ってた」

 自分で言っていて、かなり偏見がひどいなと思い、最後のほうは随分と小声になっていた。

 気まずくなって軽く俯く莉都花に、柊仁が問いかけてくる。

「そういうところがよかった?」

 慌てて視線を柊仁へ戻し、大きく首を横に振って答える。

「ううん。こっちがいい。絶対にこっちのほうがいい!」

 意気込んで強く答えれば、柊仁はくすりと笑っている。

「それならよかった。りっかちゃんを連れてきた甲斐がある」

 にこにこと笑っている柊仁に、莉都花は「うん」と小さく頷くと、今の気持ちを素直にこぼした。

「柊仁、ありがとう。ここ来れて嬉しい」
「ははっ。いいえ。かわいいりっかちゃんのためだからね」

 またからかっているなと思ったが、今はとてもいい気分になっているから、変に突っかかったりはせず、小さく照れ笑いだけを浮かべた。
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