プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「俺との関係に少しは前向きになれてると思ったけど違う?」
「それは……」

 さすがに、それには答えられなかった。賭けを始めた日と比べれば心持ちは変わっているものの、まだ踏み込みきれてはいない。

 賭けだからという気持ちと、寂しさを紛らわせるためという気持ちと、柊仁といたいという気持ち。それらがごちゃ混ぜになっていて、自分でもよくわからない。

 ただ柊仁との関係をやめたいとは思っていない。まだこの関係を続けていたいと思う自分がいることは確かだ。

 しかし、はっきり前向きになっているとも言いがたくて黙り込む。

 そんな莉都花の代わりに、柊仁がはっきりと言葉にする。

「このまま関係を続けていくなら、俺は大輝に報告しておきたい。りっかちゃんとの関係、有耶無耶にするつもりはないから」

 心臓が大きく音を立てる。まるで真剣交際を望んでいると言っているかのような柊仁の言葉に、莉都花の胸がざわざわと騒ぐ。

 柊仁はいつもつかみどころがなくて、どこまでが本気なのかわからない。莉都花と恋人になろうとしたのだって、ただ面白いからという理由が大半なのではないかと思っていた。

 しかし、莉都花を真っ直ぐに見つめている今の柊仁からは、そんな雰囲気はまったく感じられない。まさか柊仁は本当に自分を好いているのだろうかと、そんなあり得ない考えまで浮かぶ。

 柊仁の真意がつかめなくて、揺れる瞳で見つめ返していれば、柊仁はふっと表情をやわらげ、優しく問いかけてきた。
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