プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
第四章 溢れてやまないものは
 柊仁のほうへと少し歩み寄ったあの日から、約二週間。

 二人の過ごし方は特に変わっておらず、いつもあのバーで過ごしている。でも、二人の間の空気は少し変化していて、互いに遠慮がなくなってきた。

 会話の内容に大きな変化はないものの、莉都花が発言を躊躇うことがほとんどなくなり、柊仁のからかいをあしらうのも上手くなった。

 今も横から真っ直ぐに飛んでくる柊仁の視線に対し、莉都花は戸惑うことなく、視線を返している。

「なーに?」
「んー、やっぱり俺の彼女かわいいなって思って」

 少し胸が高鳴るものの、莉都花はさらっと受け流す。

「私、かわいいって言われることあんまりないんだけど」
「それは見る目がないな。りっかちゃんは最高にかわいいのに」
「本当よくすらすら言えるね。そんなにかわいい彼女がいるなんて、柊仁は幸せ者だね」
「うん、世界一の幸せ者」

 冗談で言った言葉を受け止められてしまった。

 莉都花は哲也と顔を見合わせ、肩をすくめた。

 相変わらずどこまで本気で言っているのかわからないほど、柊仁はストレートに莉都花を褒めてくる。

 柊仁のことだから、もともと女性に対してはいつもこういう態度なのだろうと思っていたが、ここまでストレートなのは莉都花に対してだけらしい。哲也がそう教えてくれた。

 自分に対してだけなのだと知れば、やはり嬉しい。ぶっきらぼうに返すことは次第になくなり、今では柊仁の言葉をそのまま受け流すか、まるっと受け入れてしまうことがほとんどだ。

 それが柊仁を助長させたのだろう。

 店の中にもかかわらず、柊仁が頻繁に甘いことを言うものだから、莉都花はもちろんのこと、哲也もこの状況に慣れてしまった。
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