プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「りっかちゃんってさ、アクセサリー着けないよな」

 だから耳を触ったのかと納得する。ピアス穴が開いているのに、まったくピアスを着けないから気になったのかもしれない。

「あー、そうだね。邪魔になるし、なくすと嫌だから着けなくなったかな。昔、ピアス片方なくしたことあるんだよね」
「そうなんだ」
「うん。結構思い入れのあるやつだったからショックでさ。今は本当にたまにしか着けなくなっちゃった」

 ピアスをなくすなんて、物語の世界にしかないと思っていたから、莉都花はなくしたことが本当に信じられなかった。自分の意思で外して、何かの拍子にどこかの隙間にでも入ってしまったのではないかと、家中探してもみたが、どれだけ探してもピアスは見つからなかった。

 社会人一年目に一目惚れして購入したもので、値段もそこそこいいものだったから、なくしたショックは本当に大きかったのだ。

 また同じことが起こるのは嫌で、今はなくしても気にならないくらいのプチプラ品しか着けない。

「そっか。まあ、りっかちゃんはそのままで十分かわいいけど。でも、着飾ったりっかちゃんも、たまには見てみたいな」

 莉都花はうーんと考え込む。おしゃれするのは構わないが、平日は仕事優先の格好になるから難しい。

 休日にデートでということならそうしてもいいが、莉都花からデートに誘うのはまだハードルが高い。

 莉都花は当たり障りのない言葉で返した。

「まあ、今度機会があったらね」
「今度か。楽しみだな」

 期待を寄せる柊仁に、これは下手なことを言ってしまったかと少し焦る。しかし、これ以上何か言っても莉都花が困る方向にしか進まなさそうだ。莉都花はその会話を強制的に区切り、別の話題へと切り替えた。

 そうしていつものようにたわいのない話をする中、お盆の話題が出たところで、莉都花ははたと大事なことを思い出した。
< 72 / 154 >

この作品をシェア

pagetop