プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「りっかちゃんの育った場所見てみたいな。福岡デートしようよ」

 莉都花は唖然とする。柊仁は地理がわからないのだろうか、そんな失礼なことまで考えてしまう。

「え、いや、そんなさらっと……飛行機の距離だよ?」
「うん。飛行機で行けばいいだろ?」
「行けばいいって。この時期は運賃高いし、そもそも席があるかどうか……」

 お盆や年末年始は本当に運賃が高い。莉都花はできるだけ早く予約して、割引価格でチケットを取るようにしているのだ。

 しかし、今からとなると割引はあまり利かないだろう。

 それに空席もかなり埋まっているはずだ。いい時間帯の便を取るのは難しいかもしれない。

 莉都花のそんな心配を、柊仁はあっさりと拭い去る。

「それなら大丈夫。料金は別に高くても気にしないし、空席があるのはさっき調べたから」
「えっ、いつの間に……」

 確かに先ほどスマホを触っていたが、会話の合間の少しの時間で調べていたなんて思うはずがない。行動の速さに感心すらしてしまう。

「別に全日俺と一緒にいなくていいからさ。一日か二日くらい、俺と過ごさない?」
「一日か二日……」

 ぽつりと呟いて考え込んだ。向こうに帰っても特にやることが決まっているわけではない。柊仁との時間を作ることは可能だ。

 しかし、地元で柊仁と過ごすという状況がどうしてもピンとこない。ほとんどこのバーでしか会っていないのに、地元に連れていっていいものだろうかと頭を悩ます。

 莉都花がそうやって考え込んでいるのを、柊仁は別の理由で捉えてしまったらしい。慌てて補足を始めた。

「あー、泊まりじゃなくていいよ。りっかちゃんは実家のほうがいいだろ? 俺は一人でホテル泊まるから」

 どうやら柊仁は、泊まりで過ごすのを警戒されたと勘違いしたらしい。しかし、莉都花はそんなところまで考えていなかった。むしろ今、その発言を聞いて、柊仁はホテルの手配も必要じゃないかと気づいたくらいだ。これはかなりの出費になるのではないだろうか。

 莉都花は本気なのかと確かめる。
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