プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「本当に行くの?」
「りっかちゃんがいいって言ってくれたらね。そしたらもうここでチケット取るから」

 飛行機の予約画面をちらっと見せられた。本気で福岡に行くつもりらしい。

 柊仁が福岡に行くのを止める権利なんてないが、やはり簡単にいいよとも言いづらくて、莉都花はまだ悩む。

「日程はりっかちゃんの都合に合わせる。場所もりっかちゃんが行きやすいところでいいし。実家から行きやすいところがいいだろ?」
「それは別にどこでもいいんだけど……」

 実家がある場所は田舎でもないから、交通手段はそれなりにある。よほど行きにくい場所でない限り、どこにでも移動はできるだろう。だから、日にちや場所については何も気になってはいない。

 そうではなくて、柊仁が莉都花の地元に来るというところが引っかかているのだ。

 どうしようかと莉都花が悩む中、柊仁はずっと期待の眼差しを莉都花に向け、OKの返事がくるを待っている。その瞳があまりにキラキラとしているものだから、とうとう折れてしまった。

「はあー、わかった。いいよ。でも、案内とか期待しないでね。地元の観光場所とかよく知らないから」
「大丈夫。俺が見たいのはりっかちゃんが普通に過ごしてたところだから」

 柊仁の地元にあったような立派な公園なんてないし、変に期待されても困るのだが、観光名所を案内してくれと言われるよりはマシだから、何もツッコまなかった。代わりに痛い現実を突きつけてやった。

「絶対に出費すごいよ。知らないからね」
「これでもそれなりに蓄えはあるから大丈夫」

 柊仁はそう言ってから、本当にその場で飛行機のチケットとホテルの予約を済ませてしまった。これでもう後戻りはできない。

 柊仁を地元に連れていくことに不安はあれど、自分の故郷に興味を示してもらえること自体は嬉しい。莉都花は最終的には笑って、その状況を受け入れていた。
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