プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 助手席に乗った莉都花は自然と胸が高鳴る。バーのカウンター席のほうが距離は近いはずなのに、なぜか車の中で隣り合って座るほうがドキドキとする。

 そんな莉都花のときめきに柊仁は気づいているのやら、いないのやら、「なんかいいな」と言って莉都花の頭に軽く触れてきた。

 莉都花の胸がさらに高鳴ったのは言うまでもない。莉都花は柊仁から少し顔を逸らすようにして小さくはにかんでいた。


 空港から莉都花の実家まで、電車で移動することはあっても、車での移動はしたことがない。さすがに空港からの道は案内できないと、実家の最寄駅までの案内をナビに任せた。

 ほとんど見覚えのない道を走っていた車は、次第に見知った道を走り出す。

 福岡に住んでいた頃の生活圏内まで来れば、莉都花はあれこれと柊仁に町のことを語っていた。

 そうしてあっという間に最寄駅まで到着。

 莉都花は「ありがとう」と礼を言って、降りる準備をしようとするが、柊仁にそれを止められてしまった。

「荷物あるんだから、家の前まで送るよ」
「え、いいよ、いいよ。ここからそんなに遠くないし」
「車のほうが早いだろ? いいから案内して」

 柊仁はにこにこと笑っている。

 そこまで甘えていいのだろうかとは思ったものの、家まででもたいして変わりはないから、結局は甘えることにした。

「わかった。ありがとう、柊仁」

 家の前まで送ってもらい、荷物を降ろすのも手伝ってもらう。なんだかもてなす側が逆になってしまっていて、莉都花は少し決まりが悪かった。

 本当なら家でお茶でもごちそうすべきだろうが、さすがに親に柊仁を合わせる勇気はなくて、柊仁とは家の前で別れた。
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