プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 帰省した翌日。今日は柊仁と出かける日だからと、莉都花は朝から身支度を整える。

 実家に帰ったときは、お昼近くまでゴロゴロとしていることが多いが、出かけるとなるとそうもいかない。

 食事を済ませ、着替えをし、メイクをしてから、髪もセットする。

 鏡の中の自分を見ながら、おかしなところはないか、くまなくチェックしていたら、母から声をかけられた。

「莉都花ー。あんたにお客さんよ」
「え? 私?」

 帰省のことを誰かに伝えていただろうかと首を傾げる。今回は地元の友人と約束はしていない。それなのに実家に訪ねてくるなんていったい誰だと訝しく思いながら、玄関へ行ってみれば、そこにいたのは一番あり得ない人物だった。

「はっ!? え、なんでいるの!?」
「りっかちゃん、おはよう。迎えに来た」

 満面の笑みでそんなことを言う柊仁に、莉都花は軽くめまいを覚える。

「迎えに来たって……ちょっ、ちょっといったん外!」

 莉都花は無理やり柊仁を玄関の外に追い出し、そこで小声で責め立てた。

「駅で待ち合わせって言ったでしょ。なんでここにいるの」
「りっかちゃんに早く会いたかったから」

 何をとぼけたことを言っているんだと莉都花は頭を抱える。駅なんてここからすぐだ。待ち合わせ時間もそんなに先ではない。どう考えても適当なことを言っている。

 そもそも早く来たなら来たで、車の中から莉都花に連絡をくれればよかったのだ。チャイムを鳴らす必要なんてなかったはずだ。

「もう……ていうか何ピンポン押してるのよ。お母さん、出ちゃったじゃん」
「りっかちゃんと似てたな」
「はあー……」

 反省する素振りすらない柊仁にため息が漏れる。普通は恋人の親に会えば、それなりに緊張するものだろうに、この男からはまったくそれが感じられない。むしろとても楽しそうだ。ずっとにこにことしている。
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