プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「りっかちゃん、今日すごくかわいいね。もしかして俺のためにおしゃれしてくれた？」

　柊仁の台詞で自分の格好を見返した莉都花は、そういえば今日は少し気合を入れているのだったと思い出した。

　せっかくなら、着飾った姿が見たいという柊仁のリクエストに応えてみようと思ったのだ。

　いつもは履かないスカートを履き、髪はハーフアップにして、耳にはピアスを着けている。メイクもいつもより少しだけ甘めに仕上げていて、完全デート仕様の自分ができあがっている。

　柊仁は喜んでくれるだろうかと、ドキドキしながら待ち合わせ場所に向かうはずが、心の準備もなく会ってしまったから、すっかり自分の格好のことなんて忘れていた。

　それを柊仁のほうから触れられるとなんだか恥ずかしくなって、早口で返してしまう。

「そうだけど……機会があったらって、言ったからね」
「そっか。ありがとう、りっかちゃん。本当にめちゃくちゃかわいい」

　柊仁がまじまじと見つめてくるものだから、莉都花はさらに恥ずかしくなって、いつもの調子で柊仁をあしらった。

「もうわかった、わかった。まだ準備終わってないから、もうちょっと待っててくれる？」
「ん。車で待ってるな」

　そう言ってあっさりと引いてくれた柊仁は、言葉通りに車の中へと向かった。

　莉都花は家の中に戻ると、急いで残りの準備を済ませ、早々に家を出た。母親に何か言われるのではないかと思うと、悠長に家の中にはいられなかったのだ。

　とんでもないことをしてくれたなと、莉都花は柊仁に何か嫌みの一つでも言ってやりたかったが、どうせ何を言っても、この男は調子のいいことしか言わないだろう。

　ただ一言「楽しそうだね」とだけ言えば、柊仁からは「りっかちゃんとデートだからね」と返ってきた。本当に調子がいい。やはりこの男を責めても、莉都花が疲れるだけだと思い、それ以上は何も言わなかった。
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