プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 ショッピングモールでクリスマスデートをしていたときのこと。

 和真と並んで歩いていた莉都花の足に背後から何かがぶつかった。

 驚いて足元を見れば、小さな男の子がその場に尻もちをついていた。

「大丈夫? 怪我しなかった?」

 莉都花の問いかけに男の子は頷いている。

「走ったら危ないよ」

 そうやって諭していると、一人の女性が「すみません」と言いながら走り寄ってきた。どうやら母親らしい。

 近くまで来たその母親としっかりと目を合わせた莉都花はそこではたと気づいた。

「あれ? もしかして祥子ちゃん?」

 とても見覚えのある顔に莉都花はそう問いかけていた。

「えっと……りっちゃん? え、りっちゃんなの?」

 懐かしいその呼び名に顔がほころぶ。

「うん! 莉都花だよ! 久しぶりだね、祥子ちゃん!」
「え、本当にりっちゃんなの! わー、久しぶりだねー!」

 手を取り合い、その場で二人で盛り上がった。

 祥子は四つ年上の莉都花の幼馴染だ。莉都花が幼稚園児の頃から、祥子にはたくさん遊んでもらった。子供の頃の四歳差はとても大きかったと思うが、祥子は年下の莉都花の存在を面倒くさがらずに、いつも構ってくれていたのだ。

 大きくなるにつれて遊ぶ頻度が減り、いつの間にやら疎遠になってしまったが、莉都花の中では、祥子は変わらずによきお姉さん的存在のままだった。

 思わぬ再会に喜ぶ莉都花と祥子だったが、再会を果たしたのは二人だけではなかった。

「……祥子?」

 なぜか和真がそう呼びかけた。

「え? ……和真?」

 祥子も和真を認識し、和真の名を呼ぶ。

 その瞬間、莉都花は強烈な胸騒ぎを覚えた。

 戸惑う莉都花に対し、二人は高校の同級生なのだと教えてくれた。でも、二人の雰囲気から、ただの同級生ではないことはすぐにわかった。きっと特別な関係だったのだと察してしまった。

 何とも言えない空気のまま、連絡先だけ交換し、祥子とはその場で別れた。
< 86 / 154 >

この作品をシェア

pagetop