プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
　和真はしばらくの間、祥子についてまったく触れようとせず、不自然なまでにその話題を避けた。でも、それが莉都花を不安にさせていると気づき、ようやく本当のことを教えてくれたのだ。

　祥子とは高校生の頃に付き合っていたけれど、和真の引っ越しが理由で別れてしまったと。

　きっと心残りのある恋だったのだろう。だから、再会した二人の間には微妙な空気が流れたのだ。

　それを考えると莉都花の不安は強くなった。

　和真は、今は莉都花が好きだからと、莉都花を安心させる言葉を何度も伝えてくれたけれど、どうしても莉都花の不安は拭いきれなかった。

　二人の過去がそうさせる理由であったことは間違いないが、それだけではなくて、祥子の状況も莉都花を不安にさせる要因の一つだった。

　結婚を機にこちらに出てきたという祥子は、夫側の有責で離婚し、今は独り身なのだという。しかも、祥子の両親はすでに他界していて、実家に帰ることもできないから、幼い我が子とたった二人で暮らしているというのだ。

　そんな状況だと知れば、優しい和真が放っておけるわけがない。莉都花だって、祥子の力になりたいと彼女のことを気にかけるようになった。

　そんな複雑な関係を上手く続けられるはずもなく、ある一つの出来事がきっかけで莉都花の不安はついに限界を迎えてしまった。

　和真が莉都花に隠れて、祥子と連絡を取っているところを見てしまったのだ。

　やましい気持ちがあってそうしたわけではないとわかってはいた。それでもダメだった。それは受け入れられなかった。

　そうして、とうとう莉都花からそれを切り出した。
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