プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「大丈夫だから。謝らないで。僕は莉都花が幸せになっていてくれて、本当に嬉しいよ」
「和真さん……和真さんも幸せでいてよ……私もそれを願ってるんだから」

 別れを選んだのは怖かったからでもあるが、彼の幸せを願ってのことでもある。その気持ちに嘘はない。

 莉都花が強く懇願するように言えば、和真は優しく「うん」と頷いている。

「こんなところまでついてくるのは、ただの心配や優しさじゃないでしょ? ちゃんと祥子ちゃんのこと好きでしょ? もう私のことは気にしなくていいから、和真さんは和真さんの幸せを考えて」

 莉都花を想っていてくれたことはよくわかったが、祥子への気持ちもきっと本物だと思う。そうでなければ、一年も見守っていられるはずがない。

 和真にそうなのだろうと視線で問いかければ、和真は困ったように眉を下げながら微笑んだ。

「莉都花はやっぱり莉都花だね。うん、そうしようか。お互い、今日から前に進もう。別々の道をしっかり歩んでいこう」

 二人はまた泣き笑いの表情を浮かべながら、それぞれの道を歩んでいくことを固く誓い合った。

 二人の間にあったわだかまりが消え去る。あの日に止まってしまった時もようやく動き出したような気がした。
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