その先もずっと 〜愛する彼と千日を過ごしたら、幸せが待っていました〜
 テーブルの前まで来ると、彼が手を差し出す。

 私は彼に手を引かれて立ち上がった。

 彼は私の目の前で(ひざまず)く。

「今日で君と付き合い始めて千日。君のことを考えない日はなかった」

 彼が語り始める。

 私はこの先に起こるであろうことを思い、どきどきと待った。

 と、花束が震えているのが見えた。

 彼、緊張してるんだ。

 私は潤む目で、彼に応援の視線を送る。

「喧嘩もしたけどそのたびに君がどれだけ俺に必要な存在なのか、思い知った。君と離れるなんて、絶対にありえないと思った」

 私はなにも言えず、ただ頷いた。少しでも油断すると、涙があふれてこぼれてしまいそうだ。

「千日なんて足りない。一万日もその先も、ずっと君と一緒にいたい。だから」

 彼は言葉を切った。

 いつしか演奏は途絶えていて、静寂が店を包む。

「だから、俺と結婚してください」

 彼はそう言って花束を差し出す。

 私も一万日じゃ足りない。もっとずっと一緒に、いたい。

 どんな苦労も、二人なら乗り越えていける。その先にある幸せを彼と分かち合いたい。
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