過去を知りたがる女【短編】
「・・・ねぇ、あなたの話を聞かせて」

ベットに横になりながら私は尋ねた。

男は、タバコを吸うだけで何も答えない。

「ねぇ。あなたは、どこで生まれたの?」

男はタバコの火を消す。「忘れた」

「じゃ、私の話聞いてくれる?」

返事を待たず続ける。

「私ね、生まれが徳島なの。実家が海の近くで、朝日が凄い綺麗に見えるのよ。代々地主だったから、土地をいっぱい持ってたの。山ばっかりだけど。でもね、今は実家には誰も住んでないんだ・・・」

少し、息継ぎ。

「あのさ、私の両親死んじゃったんだ。私一人残して」

男は、一瞬ライターを擦る手が止まったが、すぐに火を付け直した。

「ね、なんで二人は死んだと思う?実はさ、」

「1億あったら、何に使う?」

男が私の話を遮った。

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