ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
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それから約一時間後、エリスは帝都中央広場の北門付近で、アレクシスを待っていた。
第二皇子による民衆へのスピーチも終わり、帝国祭開始の宣言が成された今、辺りはお祭りムード一色である。
街全体が花々で彩られ、道にも広場にも沢山の出店が立ち並ぶ。
右を見れば、サンドウィッチやソーセージ、ラムネやエール、シロップ漬けの果物などの飲食店が。
左を見れば、花やアクセサリー、絵画やアンティークの食器まで、ありとあらゆるお店が並んでいた。
広場中央の噴水では、子供たちがきゃあきゃあと無邪気に水遊びをしたり、シャボン玉を飛ばしたり。
行き交う人々は皆笑顔で、貴族も平民も、家族連れもカップルも、別け隔てなく祭りを楽しむその様子を見ていると、それだけで幸せな気分になってくる。
(マリアンヌ様に聞いてはいたけれど、本当にお店がたくさん。これ、一日で回れるのかしら)
――何を隠そう、エリスはお祭りというものが初めてだった。
祖国でもこういった祭りはあったのだが、それはあくまで平民が楽しむもので、まして貴族令嬢が参加するなど言語道断――という文化であったため、一度も楽しんだことがないのである。
(確か、三日目の夜には花火が打ち上げられるって言ってたわよね。宮のテラスから見えるかしら)
エリスはそんなことを考えて、ひとり顔を綻ばせる。
――すると、そんなときだった。
エリスが、迷子らしき少年を見つけたのは。