ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
驚きのあまり絶句するアレクシスに、エリスは顔を真っ赤にしながら呟く。
「だって、殿下のおっしゃられた『本当の夫婦』の意味は、そういうことでございましょう?」
「それは……確かにその通りだが……」
「わたくしは、殿下の妃ですもの。とっくにその覚悟はできております。それに……あの……非常に言いにくいのですが……、先ほどから……その…………殿下の、――が……」
「……?」
「あっ……、当たっているのです……! わたくしの……っ、あ……あ、……脚にっ」
「――!?」
すると言い終えた瞬間、エリスは恥ずかしさが天元突破したのだろう。
両手でパッと顔を覆い、耳まで真っ赤に染め上げた。
そんなエリスの様子に全てを悟ったアレクシスは、
「すっ、すまない! これは生理現象だ!」
などとよくわからないことを口走りながら、すぐさまエリスを膝上からベッドへと下ろす。
――もはやムードもへったくれもない。
が、アレクシスにとって今最も重要なのはそんなことではなかった。
聞き間違いでなければ、エリスは今、『これから初夜のやり直しをしてもいい』と言ったのだから。
(本来なら、エリスの怪我の全快を待ってからすべきことだが……)
エリスにここまで言わせておいて、『今日はやめておこう』と言うのは、彼女に恥をかかせることになるのでは。
いや、たとえそうでなくとも、せっかくのチャンスをふいにするわけにはいかない。
アレクシスは、未だ顔を覆ったままのエリスの腕をそっと掴んでどけると、赤く染まった顔を覗き込む。
「今の言葉……本当だな? 途中でやめたいと言っても、やめてやれないが」
そう念押しすると、エリスはこくりと頷いて――。
「――っ」
刹那、気付いたときには、アレクシスはエリスの唇を塞いでいた。
勢いのままエリスの身体を押し倒し、奪うようなキスを繰り返す。
もう、思い悩むことは何もない、とでも言うように。
「痛かったら言え。やめてはやれないが、加減はする。――愛している、エリス」
「……っ」
熱っぽい瞳でエリスを見下ろし――もはや少しも待ち切れないと――何度も、何度でも、エリスの白い柔肌に唇を落としていった。