ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
7.アレクシスの来訪
それはエリスが庭園の手入れをしているときのことだった。
「エリス様、大変です! 殿下が本日夕食を共にされると、たった今使いが来て……!」
――と、侍女が血相を変えて、アレクシスの来訪予定を伝えに来たのは。
◇
「本当に殿下はこちらにいらっしゃるのね?」
「はい、間違いありません」
「……そう」
侍女から話を聞いたエリスは、急いで私室に戻り身支度を整え始める。
その心に、強い不安を抱きながら――。
エリスはこの一ヵ月ですっかりエメラルド宮に馴染んでいた。
最初はどこかよそよそしく感じていた侍女たちの態度も、実際に話してみると、実は自分を心配してくれてのことだったとわかった。
アレクシスが女性に冷たいことは、王宮内では有名な話。
そんなアレクシスの妻になるなんて不憫だ。どうにかお支えしなくては――と。