ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

 ◇


 それからしばらく、エリスはマリアンヌから沢山の質問を受けた。
 そのほとんどは、アレクシスとの結婚生活についてだった。

 アレクシスが辛く当たっていないか、困ったことはないか、何かあればすぐにわたくしに相談してちょうだいね――と言った具合に。

 どうやらマリアンヌは、エリスのことをとても心配してくれていたらしい。

 マリアンヌは、二番目の兄である第四皇子ルーカスがアレクシスと同い年なこともあり、幼い頃から三人で過ごすことが多かった。
 だがあるときからアレクシスが女性に嫌悪感を示すようになり、それ以来、距離を取られているのだと語った。

 そんなアレクシスが、妻に優しくしている筈がない。
 クロヴィスに様子を聞くと、案の定、アレクシスは一月もの間妻を放置しているという。

 それを聞いたマリアンヌは、居ても立っても居られずエリスにお茶会の招待状を送ったのだと。


「そうだったのですね。ご心配をおかけし、大変申し訳ございません。でも実は二週間前から、殿下はエメラルド宮に居室を移されておりまして、今は食事も共にしておりますの」

 そう。この二週間、エリスはアレクシスと朝夕食事を共にしている。
 アレクシスはできれば朝夕どちらかでもと言ったが、エリスは妻として、夫の希望には答えたいと考えていた。
 だから、朝はアレクシスの起床時間に合わせて支度をし、夕食もできるだけアレクシスの帰宅時間に合わせるようにしている。

 最初はエリスの「今日は何時ごろに帰られますか?」という問いに答えるだけだったアレクシスが、最近は自分から「今日は〇〇時に戻る」と言ってくれるようになった。

 エリスはそれが、どうしようもなく嬉しかった。
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