ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

 そんなアレクシスだったから、最初は全てをデザイナーに丸投げしようと考えた。
 実際、アレクシスはエリスのドレスのデザイン画を見せ、「このドレスに合わせてデザインしてくれ」とだけ注文を付け、いくつかのサンプルを作らせた。

 だがどうもしっくりこない。
 どれもエリスには華やかすぎる気がするのだ。

 もしそのネックレスを身に着けるのがマリアンヌであったなら、何の違和感もなかっただろう。あるいは、他の皇女や妃たちなら馴染んだかもしれない。

 けれど、エリスには強すぎる。

 確かに彼女は美人だが、パッと周りの目を引くようなタイプではないし、身長は百六十センチに満たないほど小柄な上、体つきもほっそりしている。
 女性らしい体系の他の妃たちと並ぼうものなら、まるで子供に見えるかもしれない。

 そんな彼女に派手なデザインの宝石は似合わない。

 そう思ったアレクシスは、結果的に色々と口を出さなければならなくなった。

 おかげで何日も仕事が滞り、その遅れを取り戻すために夜遅くまで居残る日々が続いた。
 帰宅は真夜中を過ぎるため、夕食は執務室で取るしかなく、エリスには先に休んでもらうしかなかった。

 だがようやくその遅れを取り戻し、今日こそは早く帰れる。ネックレスも完成した。一緒に夕食を――と意気込んでいたところ、セドリックが疲労のためダウンしてしまったものだから、仕事が終わらなかったのだ。
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