ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
13.宮廷舞踏会
アレクシスと共に王宮の大ホールに足を踏み入れたエリスは、その荘厳さと人の多さに圧倒された。
まずとにかく広いのだ。
スフィア王国の王宮の十倍はあるだろう。
二階席のある吹き抜けの天井は、見上げると首を痛めてしまいそうなほどの高さがあり、ぶら下がるシャンデリアの数も馬鹿にならない。
二十……いや、三十はあるだろうか。
あれだけの数のシャンデリアを支えるためには、天井にも柱にもかなりの強度が必要なはず。
壁や柱に施された彫刻や金の装飾も、見事という他ない。
(やっぱり、帝国って凄いんだわ。それに、聞いてはいたけど人がとても多い)
エリスは女官から、宮廷舞踏会について一通りの説明を受けていた。
まず、宮廷舞踏会が行われるのは年に一度。開催時期は、社交シーズンの最も盛りな五月の初めだ。
時間は午後八時から十二時までの四時間。
出席者は成人済みの皇族と妃たち、伯爵位以上の貴族とその妻。また、軍の将官、それに各国から招かれた王族など総勢千名以上が参加する、政治的に重要な行事である。
とは言え、舞踏会のしきたりは全く厳格なものではなかった。
最初に皇帝と皇后が一曲踊り、次に皇子とその妃が躍る。そして未婚の皇子と皇女が躍ったら、あとは最後まで自由時間というフランクなものだ。
踊りたければ踊ればいい、食事をしてもいい。帰りたければ帰ってもいい、と。