ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

 十六歳になったシオンの身長はエリスをとっくに超えていて、随分と逞しい身体に成長していた。

 エリスがおずおずと顔を上げると、当然顔立ちも大人びていて、何だか知らない人の様に思える。

(でも、そうよね。会うのは四年ぶりだもの)


 ――エリスがシオンに最後に会ったのは、もう四年も前のこと。
 そのときまだ十二歳だったシオンは、天使のように愛らしい少年だった。

 エリスと同じ亜麻色の髪と、瑠璃色の瞳。
 エリスもシオンも外見は母親譲りで、幼い頃の二人は性別こそ違えど、本当にそっくりだった。

 シオンは目が大きく童顔で、色白だったこともあり、よく姉妹に間違えられた。

 違うところと言えば、シオンの方は髪質がややくせ毛なところくらいだ。


 そんな愛らしかった弟が、会わない間にこんなに大きくなっているものだから、エリスはとても驚いた。
 けれど、自分をまっすぐに見つめるこの瞳は、紛れもなく彼女の記憶の中の弟のものだ。

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