ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

17.舞踏会の裏側で


 アレクシスが案内されたのは、灯りのない中庭だった。
 王宮内に多数点在する名もなき中庭の一つで、当然、この時間に立ち入る者はいないような場所である。


「こんな暗い場所にエリス様が……? 殿下、やはり衛兵を呼んで参りましょう」
「駄目だ。向こうの目的がわかるまでは下手に動くな。ここにはジークフリートもいる。大ごとにはしたくない」
「でしたら、せめて剣だけでも取りに戻られては」
「ハッ。今からか? 行って戻るだけでどれだけかかると思ってる」
「ですが――」
「それ以上言うな。お前はここで待て。何かあれば合図をする」
「…………」

 アレクシスはセドリックに中庭の出入り口で待機するように伝えると、ジークフリートと共に芝生に足を踏み入れた。
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