ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
3.結婚初夜
エリスの輿入れが決まってから二ヵ月後、ヴィスタリア帝国、王宮内の教会で結婚式が執り行われた。
参列者は帝国の皇族のみの、厳かな式である。
パイプオルガンの音が鳴り響く中、白いウェディングドレスを着たエリスは、つい先ほど初めて会ったばかりの第三皇子アレクシスと腕を組み、赤い絨毯敷きのバージンロードを慎重に進んでいった。
なお、帝国の皇族のウェディングドレスは形が決まっていて、袖は十分丈、首も肩もきっちり隠れるクラシカルなデザインだ。
ブーケは白薔薇。
アレクシスの方は黒の軍服姿である。
エリスは祭壇の前で立ち止まると、緊張した面持ちでアレクシスと向かい合った。
小柄なエリスと身長百八十センチを超える長身のアレクシス――二人の視線が交わるが、アレクシスは微笑むどころか眉一つ動かさない。
(わかってはいたけれど、やっぱりわたしは歓迎されていないのね)