初恋、叶えてもいいですか?
「今日の映画、泣けるって評判らしいよ?」
「え?」
「だから、映画で泣いたってことにすればいいんじゃない?」
そう言って私の手を引いて、映画館の方向に歩き出した。
「俺さ、今日、めちゃくちゃ楽しみにしてて。映画のチケットは朝一で買ったし、この服だって昨日、急いで買いに行ったんだよね」
「……っ、」
私の顔は見ず、前を向いたままそう話す大西くんの大きな背中を見つめた。
そのまま少し下に視線をずらせば、彼の手がしっかりと私の手に繋がれている。
大西くんの手、おっきいなぁ……。
細くて綺麗な指、大きくてあったかい手は、私の手をしっかりと包み込んでいる。
パパとしか繋いだことのない手。それも小学生の頃までの話で、異性と手を繋ぐ初めての経験に、ドキドキしないわけがない。