いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~

その背中を見送った後、やれやれと言わんばかりに、額に手を添える聖さんに思わず苦笑を返す。


「本当にもう。あの子は相変わらずねえ」

そんな聖さんの気持ちを代弁するように、同じく眉尻を下げた表情でそれを見守っていた凛々子さんが答えた。


「その……白亜くんとは随分と対称的なお人柄……なんですね」

「はは、対称的か。まあそうだね。双子とは言え、中身は別ものだしね。クロは大体いつもあんな感じだから」


誰かに宛てたわけではない言葉を、名前を出された張本人がくすりと笑いながら拾い上げる。


「あれでいて悪気があるわけじゃないんだ。口ではああ言っていたけど、実際は菜礼さんを特別に嫌っているとかでもなくて、基本的に皆に対してああだから」

“だから、安心してね”と、目線で付け加える白亜くんの気遣いに、私はやんわりと頷き苦笑いする。


「いやあ、ごめんね初日早々。あまり積極的に人付き合いをしない子だけど、一緒に暮らしていく内に慣れるはずだから勘弁してあげてくれるかな……」

「あ、はい。大丈夫です」


自分の息子の不遜な態度に責任を感じたのか、聖さん自ら謝ってくれるのが逆に申し訳なく感じてしまう。

私は気にしていない素振りで首を振り、姿の見えなくなった2階にそっと目を向けていた。


「ところでさ。来週から菜礼さんも僕たちと同じ高校に転入ってことになってるんだよね?父さん」

「ん?ああ、そうなるね。菜礼ちゃんもこれからは白亜と黒芭と同じ全日制の高校に毎日登校することになるからね」


微妙な空気を変えるようにして軌道変更する白亜くんの問いかけに、聖さんは思い出したように頷く。


ここに来る前に、祖母から簡単に説明を受けていた今後の話。

私は祖母との生活における経済面を支えるため、これまで週に数回決められた日数のみ通学を行う通信制高校に通いながらアルバイトする日々を送っていた。

それが、神代家で暮らしていくにあたり、聖さんの提案もあって、全日制高校に転入する運びとなったのだ。

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