いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「んもう!洸さんも悦さんも自由過ぎでしょ!勝手に引っ掻き回してるのアンタらですからね!?」
そこで、身内の奔放ぶりに痺れを切らしたのか、ため息交じりに割って入るのは、この中で恐らく一番の常識人である遼太郎さんだ。
「理事長ほんっとすみません!この人たちいっつもこんなんなんすよ!」
「ははは。辻くんも相変わらず、中等部に通っていた頃から変わらないね。こうして顔を合わせるのは、デビューの報告を受けて以来、恐らく7年ぶりくらいだが、その物怖じしないタフな精神力と面倒見の良さは今も健在のようだ」
「冗談やめてくださいよー!オレマジ苦労しかしてないんすよ!4つも年上のフリーダム過ぎる先輩たちに板挟みされてそろそろ多分胃に穴が……って、アイタタタ!洸さん悦さん!待った!ストップ!暴力反対!!」
理事長相手にもやけに砕けた調子で軽口を叩く遼太郎さんを、突然羽交い絞めにして背後から固定する悦さんと、それに便乗するように頭部を両手でがっちりとホールドし圧力をかけ始める洸さん。
もう本日何度目かのそういう展開を見て、この3人の関係性がなんとなくわかってきた気がする。
「ああ、そういえば。君が私の兄――聖の家に滞在しているという咲田さんだね。白亜や黒芭だけでなく、私の娘とも仲良くしてもらえているみたいで嬉しいよ。これからもどうかよろしく頼む」
「こ、こちらこそです!」
クロクロの3人がそんな調子で好き勝手やっている隙に、理事長が向かいの一人掛けソファを立ち、入口前に佇む私に声をかける。
私は差し出された手を素直に握り、聖さんとも雰囲気の似た理事長を相手に、ペコペコと会釈して答えた。
「そして、白亜と黒芭、まさかお前たちがイベント実行委員に加わったと聞いた時は驚いたが……。まあこれも何かのめぐりあわせというものだろうな。それにエレナとも付き合いの長い利久くんが学級委員の相棒を担ってくれているというのも実に頼もしい限りだ」
理事長はそう言って、エレナを除く私たちひとりひとりに握手を求め頬を緩める。
「さて――」
まだ腕を組んで不服をあらわにしているエレナも仕方なく、本題に入ろうと一人掛けソファに戻った理事長の背中を見て、渋々正面に向き直した。