いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~

理事長はソファに体重を預けつつ、前かがみになって両手を組み、私たち全員の視線を集める。


「君たちを今日この部屋に呼び出したのは他でもない。わが東蘭高校では、毎年9月に開催される文化祭――蘭秋祭の中央ステージにて披露されるパフォーマンス用の特別ゲストを今年はこの3人――クロック……」

「cropped clock's」

「――に決定しすでに彼らの事務所とも契約を結んである」


またしても大事なところで舌を噛みそうになってしまう理事長をすかさず援護し、スマートに口を閉ざす櫂先輩は、恐らくこの話をすでに知っていたもようだ。

そういえばエレナもさっき、理事長からそういう話がどうとかっていうのは聞いていた素振りだったけど、ここまで本格的に話が進んでいること自体は彼女も初耳だったらしい。


「それでだ。実は本題はここからでね。もちろん彼らには当日蘭秋祭用のステージパフォーマンスを披露していただく予定なのだが、そのライブ、1曲で構わない。ぜひともわが校の生徒たちにも参加させてあげて欲しい」

「ほう?」


理事長の提案にニヤリと口角を上げてそう呟いたのは、クロクロの洸さんだ。

彼は、べったりとソファの背もたれに預けていた腰を離し、興味深いと言わんばかりに理事長同様に前かがみになる。


「あくまで文化祭の主役は生徒だ。君たちの人気と実力は素晴らしいものだが、ここはひとつ、君たちのような類まれなる努力と才能によって成功を掴んだ偉大な先輩と、是非とも同じステージで同じ感動を分かち合う機会を、生徒たちにも与えてくれないだろうか?」


理事長の真剣な眼差しを直に受けて、洸さんは「具体的には?」口元の緩みをすっと戻して、一瞬にしてプロの顔つきになる。


「生徒とともに最高の1曲を、またそれを披露するステージの全てを作り上げてもらいたい。そのための打ち合わせや君たちと生徒たちを繋ぐ橋渡しは、イベント実行委員長の桃園櫂に全権を委ねた上で、今ここにいる彼らに任せたい」

「えっ!?」
「ちょっとパパ!?」

その言葉を聞いた私とエレナが真っ先に反応し、声が重なった。

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