いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「言っておくけど、本気で迷惑に思ってるから」
わざわざ言わなくてもいい一言まで追加して、それでも強引に私の顔の前にそのハンカチを押し付ける彼の不器用な優しさが胸に染みた。
「あ、ありがとう……。でも……」
「べ、別にそれまだ使ってないやつだから!汚くなんかないから!」
「う、うん……」
別にそこを気にしていたわけではないのだけど、そう言われれるとなんだかそのことにも勝手に意識がいってしまう。
もうお昼休みだけど、今日1日トイレとか行かなかったってことかな……。それはそれで大丈夫なのだろうか。
「こういうの僕苦手なんだよ……。だからさっさと泣き止んでくんない。そしてさっさと僕の生徒手帳返して」
「あ、ご、ごめん、そうだった。すぐに返……」
慌ててハンカチを受け取った手と逆の手に持っていたそれを彼に返そうとした結果、手先を滑らせてうっかり地面に落としてしまった。
「あ、ごめんね」
「いいよ、自分で拾える」
琉唯くんの足元に落ちたそれを彼が屈んで拾い上げ、状態を確認するためか、そのまま手帳のページを開いていく。
「……中の写真、見た?挟んでたページの位置が変わってる」
「えっ……。あ、ごめん。実は拾った時にうっかり写真が落ちちゃって」
「……別にそれなら仕方ないしいいけど」
「その……綺麗な、人だったね。琉唯くんのお母さん?」
自分は恐らく目を真っ赤に腫らしてみっともない顔をしているだろうし、無言になるのは気まずくて、無理に話題を探すように問いかける。
「……。ああ、うん。そう」
一瞬不愉快そうに眉を顰めた彼は、今の私の状態を見て出しかけた言葉をどうにか飲み込んでくれたらしい。
なんだか気を遣わせてしまったようだ。っていうか私ってばまた。
さっき人との距離感について、指摘を受けたばかりだったのに。本当、学習しないなあ……。
情けなくて、自分がとんでもなくイヤになる。
恥ずかしい。
「……」
「ちょっと、自分から訊いておいて無視?」
「えっ……。あ、ごめん、聞かない方がいい話なのかなって思って」
「だったら最初から答えてない。別にいいよ。母親と子供のツーショットくらい、珍しいものでも何でもないでしょ」
そう話す琉唯くんは、そのまま生徒手帳を自らの制服のポケットにしまって、校舎の壁に寄りかかり、私から目を逸らす。